2023年01月11日

「帝銀事件」2冊の本

昔、映画の広告コピーに「読んでから見るか、見てから読むか」があった
角川映画だったと思うが、本も読んでほしいし映画も見てほしい両面作戦だった
以下の二冊は「見てから読んだ!」本だ
「帝銀事件」2冊の本

見たのは、NHKスペシャル未解決事件ファイル「松本清張と帝銀事件」
事件からだいぶ時間が経過し、今だからこそやっと表に出せるような内容だったかもしれない
番組は松本清張が出版社と「ノンフィクション」と「小説「フィクション)」
のどちらで発表するかを悩むシーンがある(その場面はドラマ仕立てだった)
だがドラマ仕立てだけにわかりやすい内容だったと言える

帝銀事件は昭和23年の年始めの頃、都の職員を語る男が帝国銀行の支店に現れ
赤痢にならないための薬だと言って毒薬を飲ませ
12人が亡くなるそのすきに金銭を盗み出すという残酷な事件だ
帝銀事件はこんな事件→帝銀事件

毒物が青酸化合物で青酸カリとな青酸ナトリウムならば
瞬時に死に至るのだが、一分ほどのタイムラグがあって
毒を飲んだ人はそれからバタバタと倒れてしまう
このタイムラグを実現できるのはどういう人か?が事件の肝心な点で、
可能性として悪名高い731部隊の関係者が疑われる
警察もその線で捜査を進めていたが、あるときからパタッと
方向が変わってしまう

そのきっかけは、平沢貞通という画家が容疑者として逮捕されてからだ
彼は似顔絵に似ているとか、お金を銀行から出金したときの筆跡が似てるとか
出どころ不明のお金が事件後使われているとか、、、
つまりは直接証拠ではなくて間接証拠・状況証拠と世の中の空気によって
極めて怪しい人間として扱われてしまう
(筆跡鑑定をした人は以前に間違った鑑定をしていたし
 似顔絵も犯人じゃないと宣言する被害者もいたのだが)
彼は裁判にかけられ死刑となるのだが、今の感覚からすると
えらく強引に犯人にされてしまっている
それは旧刑法の自白中心主義でせいで、平沢貞通氏は一旦は自白をしてしまう

この2冊の本を読むと、平沢氏は嘘ばかりをつく変な人だと実感する
脳に障害の残る病気になったからとの説明もあるが
それでも現代の裁判の状態ならば「疑わしきは罰せず!」
となるのだろうと想像できる
そのくらい、この2冊は精緻で客観的な論理展開が展開されている

今のタイミングでNHKがこうした番組を放送したのは
何か意味があるのか?たまたまなのか?
そんなふうに思うのは、考えすぎだろうか



同じカテゴリー()の記事画像
超・進化論
「江戸の裁判」は途中から読み始めるのがおすすめ
「暇と退屈の倫理学」(国分功一郎)を一気読みした
今年最初に読み終えた本
本の価格
大活字本
同じカテゴリー()の記事
 超・進化論 (2023-04-12 09:11)
 外国人が見た日本の社会(「歴史の終わり」から) (2023-04-11 09:35)
 「江戸の裁判」は途中から読み始めるのがおすすめ (2023-03-11 09:16)
 「暇と退屈の倫理学」(国分功一郎)を一気読みした (2023-02-23 18:34)
 今年最初に読み終えた本 (2023-01-02 16:36)
 本の価格 (2022-10-10 09:35)

Posted by パパパ at 17:24│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。